ディスクブレーキの良し悪し

ディスクブレーキについて

最近はディスクブレーキを標準で装着したマウンテンバイクの割合が増え、 見た目にも格好良いですし値段もこなれて来ましたからメカ好きには堪らない装備だと思います。

『買うならDISCブレーキ付き!!』...と言いたい所ですが、DISCブレーキの方が良い場合もありますし、 Vブレーキの方が良い場合もありますので本当に必要かを良く検討してみて下さい。

ディスクブレーキのメリット

DISCブレーキはオートバイや自動車に使われているブレーキと同じ構造で、 今まで自転車に使われてきたブレーキより強力な制動力を得られます。

通常MTBに使用されているカンチブレーキやVブレーキの場合、 タイヤが泥をかき上げ、その泥が画像の赤矢印部分に溜まってしまいます。

そうするとリムとブレーキシューの間に泥がかみこんでブレーキの効きは 更に悪くなってしまうのですが、ディスクブレーキの場合は比較的 泥などの影響を受け難い場所にブレーキのローターやパッドがあり 泥や雪などの悪状況でも確実な制動力が得られ、高速走行でもブレーキが効きます。

ディスクブレーキのデメリット

これはフレーム、フォークやローター、台座の精度によって異なりますが、 油圧ディスクブレーキの場合はパッド間の隙間を自由に調整する事が出来ず、その隙間も本当に僅かしかありません。

(メカニカルディスクブレーキでもレバーの引きしろを少なくすると同じ現象が起こります)

下の絵は全体を見ると左右の車輪とも真っ直ぐ立っているかのようにも見えますが、 若干右側の車輪が左に傾いており、通常この程度の微妙な角度の違いは 神経質な方以外は乗車しても気がつかないものですが、 車輪をフロントフォークやリアエンドに嵌める時、このくらいの本当に僅かな角度のズレで、 パッドとローターが擦れてしまい、タイヤが回っている最中にずっとシャラシャラと音が出てしまいます。

キャリパーが少し曲がっていたり、ローターに少し振れが出ていても同じ事が起こります。 ブレーキパッド交換の頻度は今までのVブレーキに比べて 少なくなるのですが、車輪を取り付けた後にキャリパーの角度調整が上手く行かずに 何度もキャリパーを緩めては締め、緩めては締め...と擦れないように調整する事が極端に増えますから、 車輪を頻繁に外される方、輪行する方、常時シャラシャラ音が出るのは気になるなぁ...という方にはお勧めできません。

ディスクブレーキのデメリット

油圧ディスク(ハイドロリックDISC)

ハイドロリック(油圧式)ディスクブレーキは自動車やオートバイで使用されている ブレーキと同じ構造の物で、ブレーキレバーから入力された力をブレーキパッドに伝えるまでを ワイヤーではなくオイルを使用します。

特徴は軽い力で強力な制動力を得られ、 高速走行でもブレーキが良く効きます。しかし、ワイヤーの変わりにオイルを使用する為、オイルの中に 空気が混入してしまうとブレーキレバーのタッチがフニャフニャになってしまい その空気の量にもよりますが沢山入ってしまうとブレーキが全く効かなくなってしまいます。

ブレーキのメーカーにもよっても違いますが逆さまにしたり、夏に高温になる自動車の車内に 放置したりするとブレーキホース内にエアーが入ってしまう場合があります。

ブレーキにエアーが入ってしまった場合はエアー抜きと言う作業を行い、 オートバイや自動車の油圧ブレーキを弄った経験のある方でしたら基本的な構造は一緒ですから 特に問題なく行えると思いますが、一般の方にはかなり面倒な作業です。

それから油圧ブレーキの場合、車輪を外した状態でブレーキレバーを握ってしまうと パッドとパッドがくっついたまま戻らなくなり、マイナスドライバーなどでこじ開けなければ 車輪を取り付けできなくなくなってしまいますから車輪を外した際にはパッドとパッドの間に プラスチックの板などを挟んでおかないとなりません。

また、片側2〜3万円程度するものなら殆ど問題ないですがそれ以下の物の殆どは ローターが錆びてきますので見た目も悪くなってしまいます。 デメリットばかり上げているような感じになってしまいますが、 油圧ディスクブレーキのタッチや制動力は抜群ですから、 本格的にレースや山でご使用になる方やメカ好きにはとてもお勧めです。


機械式ディスク(メカニカルディスク)

こちらはオイルではなく、ワイヤーでブレーキパッドを 閉じる仕組みとなっています。

油圧には敵いませんが ブレーキの効きはVブレーキよりも良く、雨、雪、泥の中のような悪状況でも確実な制動力が得られます。

こちらはパッドのリターンをスプリングで行っておりますので車輪を外した後にブレーキレバーを握ってしまっても スプリングの力で戻ってくれます。

メンテナンスもワイヤーを使っておりますので調整も簡単です。 AVIDやHAYESの物でしたらパッドとパッドの隙間調整をキャリパー側で行えますので、 ローターにパッドが擦れてシャラシャラでてしまう音も手軽に調整できます。

ブレーキレバーもVブレーキと兼用になっておりますのでコスト的にも安くあがります。 ただし、殆どのローターはすぐに錆びてきますので室内保管できる方や こまめにメンテナンスをされる方にお勧めです。


Vブレーキ

現在販売されているMTBの殆どに装着されているのがこのVブレーキですが、 昔のカンチブレーキに比べて支点の位置が変わっておりブレーキの効きが良く、メンテナンスも簡単です。

上記2種類のブレーキに比べると重量が軽くユーザーレベルでの分解やオーバーホール、シュー交換も簡単です。 Vブレーキの中でもSHIMANO LX以上のグレードはパラレルリンク式と言う方式を採用しており ブレーキシューが減ってきてもリムへぶつかる面はいつも平行になり制動力が衰えません。

しかし、パラレルリンク式はリンク部分が多い為、錆びてしまうとVブレーキの動きがとても悪くなり、 そのまま放って置くとリムにブレーキシューで挟む事が出来なくなってしまいますから 不精者や雨の日も通勤通学でお使いになる方は余り高いグレードのブレーキはお勧めしません。

また、Vブレーキが標準装着の完成車のハブ(車輪の軸)はDISC対応になっていない物が多く、 ブレーキのローター(ディスクの板)を取り付ける事ができませんから フレームやホークにDISC台座が付いていたとしても後々DISCブレーキを付ける際には 車輪とブレーキ全部の交換になります。その時には3〜10万円はかかると思っていた方が良いと思います。

そして制動力の高いブレーキはフレームやリムにそれだけの負担をかけますから、 なんでも高級パーツをつければベストコンディションになると言う訳ではありません。 ブレーキに関してはどれも長所と短所がありますので必要に応じた物をご検討ください。